第四回

「復活「月刊アッコちゃん」はちょっと社会派で行きます」

どんな思い付き?
復刊する「月刊アッコちゃん」ですが。今後はどんな思いつきを?
矢野
嫌いなものシリーズなんかもさ、今度はアメリカ人にも聞いてみたいわね。「嫌いな言葉って何?」とか「嫌いな音は?」て。ほら、そんなこと普段は聞く機会ないじゃない。
 
アフリカのなんとかっていう部族の人の嫌いな音とかさ、イヌイットの人の嫌いな匂いとか興味あるでしょ?「白熊のおならです」とか答えだったりして(笑)。
すごい取材ですねそれ
矢野
「月刊アッコちゃん」ワールドワイド版っていうのもいいよね。ニューヨークみたいに色んな人間の暮らしている街にいたらさ、知り合いの知り合いを少し辿って行ったら、それこそ世界中のどんな人にでも話が聞けそうな気がするじゃない。変っている人ならいくらでもいるわけだし。
見学は続けますよね?
矢野
もちろん。
今、行ってみたいところとかありますか?たとえばブルックリンの地ビール工場なんかは行かれたことありますか?
矢野
行ってないわけないでしょ(笑)。並んで行きましたよ。普通のレストランとかお店では飲めないやつとかがあってね。金曜の夜だけ工場を開放してさ、安く樽出しのビールが飲めるもんだから、ものすごい人なんよ。
 
確かあれは「Hi from Akiko」でも紹介したのよね。私は友達のデイジーと行ってさ、他にもアメリカ人の友人とかが来るはずだからって待ってたんだけど。もちろん約束の時間なんかには来ない。そのうちにこっちは酔いが回ってきていい気持ちになっちゃって。「もう撮っちゃう?」って。あの回のビデオレターはなんかちょっと変った感じになってるのよね。酔っ払い二人でさ(笑)。
(笑)。他にも行ってみたいところはありますか?
矢野
ああそういえば、糸井(重里)さんが言うには匂いのするキャンドルってあるでしょ。ロウソクね。その匂いの素になるものって世界中でただ一社で作っていて、ニューヨークにその会社があるらしいって言うのよ。そこが匂いのするキャンドルの素をコントロールしているらしいのね。糸井さんが以前調べたんですって。そこに行ってみたいのよね。どういうことになっているんだろうかって。
キャンドル
稀代の匂いフェチとしては見逃せませんよね
矢野
他には、飛行機の整備工場とかも行ってみたいわね。どういうことに関してどれくらいのチェックポイントがあるんだろうって。ほら、優秀な航空会社とダメな会社の整備の質とか比べたりしてさ。
ちょっと社会問題に切り込んだ企画になりそうですね(笑)
矢野
ねぇ(笑)。きっと見学コースがあるはずなのよね。行ってみたい。そういえば私、前にマーシャラーという職業の人にインタビューしたのよ。(113号)
空港で飛行機の地上誘導するお仕事ですね
矢野
そうそう。私も少しはできるのよ。いざとなればね。いつどこで役に立つかわからないけど(笑)。
 
「月刊アッコちゃん」は別に何かを学ぼうってつもりでやってはいなかったんだけど。それでもやっぱりそんなふうに専門家の人にいろいろ話を聞いたりすると、嫌でもためになっちゃうのよ(笑)。なんでもさ、防寒着にボタンのかけ方一つでも、プロの話っていうのは面白いのよね。
そんなふうに、プロの方に話を聞いたり、実際に仕事を体験されてみたりしてどうでしたか?
矢野
どんな仕事でも大変なんだなって本当に思った。世の中に楽な仕事なんてないんだなって。
 
そりゃね。音楽を労働とは考えていないと言ったけど、もちろん仕事の面もあるんですよ。ただほら出発点がね、自分の好きなことってところから始まっているじゃない。好きなことを、それをたとえば嫌だなぁって思いつつ、疲れながら、苦手な相手と付き合って、さらに残業して、遅くに帰ってきてビールを一杯飲んでバターンと倒れこむ。それで少し時間をみつけて趣味の読書なんかにあてるみたいなね。そういうわけではないでしょ。もちろん仕事は疲れるけど、でも好きなことを、自分を表現することをしてそれに対してお金をもらっているんだから。英語で言うところの「I can’t complain.」というやつでさ、それに対する感謝の気持ちは本当にありますよね。
感謝の気持ちは本当にあります
これは本当に馬鹿っぽい質問なのですが、なんで音楽がそんなに好きなんだと思われますか?
矢野
もう、本当に馬鹿な質問ね(笑)。
 
音楽が好きっていうか、きっと私の遺伝子の中に表現したいという意欲みたいなものがあってさ、そこに幼い時に音楽というお水をそそがれたら、それがもうぴったし合ってしまったという感じなんじゃないかなぁ。わからないけど。
 
それと、とにかく音楽を嫌だと思ったこととか、ピアノを弾くことが嫌だと思ったことが、生まれてから一度もないんだから。
遺伝子の中に
それって編集長の言葉だから、あぁそんなもんかって素直に受け入れられますが、よくよく考えてみるとすごいことおっしゃっていますよね
矢野
ねぇ。50年間。これは本当に凄いでしょ。唯一の自慢(笑)。
 
もちろん練習は嫌いだけどね。でも好きな曲はいくらでも弾いていられるわけ。子供の頃からそんな私を、親が野放し的にサポートしてくれて(笑)。この子には他になんもとり得がない。これはピアノを弾かせるしかないだろうというところに、ごく早いうちから焦点を当てて。高校生の時からジャズクラブで演奏ができるとか、そんな環境ということで別に青学のブランドにひかれたわけでもあそこの制服に憧れたわけでもなく、ただひたすらあそこの軽音学部に入りたいがためだけにね。
 
(私の周りの)すべてのひとがそれを指示してくれたことも大きかった。14歳の女の子に一人で東京の学校行かせるなんて、私ならさせないわよ(笑)。
 
高校途中でプロの道へ進むことに関してもね、父はそりゃあ「苦労するぞ」とか言ってくれたけど、無理やり止めさせるなんて事はなかったし、母はもっと「いいんじゃないの」みたいな感じでさ。そのまま来ちゃった。
 
誰も止められないよね。(笑)
では最後に、この度復刊する「月刊アッコちゃん」編集長として一言
矢野
おもしろそうなこともなそうなことも、今となってはほとんどウェブ上でチェックできる時代です。だれもやっていないことをやろうというのを実行するのは難しい。でも"矢野顕子が考えてやる"っていうことがいつも中心ですので、その点をどうぞ楽しんでください。私もみんなと一緒に「あーおもしろかった!」って言えるようにしようっと!
 
編集長 矢野顕子

第一回
「はんぺんの将来を考えると、やのの将来が見えてくる?」
第二回
「This is a pen?」
第三回
「その人の人間の部分が出ちゃう企画が好き」
第四回
「復活「月刊アッコちゃん」はちょっと社会派で行きます」