2011年9月9日 昭和女子大学 人見記念講堂②
『今夏の天気はほんとうに気まぐれで、朝は晴れていてもいきなりゲリラ豪雨に遭遇することもしばしば。けれど今日は終日秋晴れのとてもすがすがしい天候にめぐまれ、絶好の外出(コンサート)日和でした。朝からお二人の音楽を聴きつつ、今夜のライブのことをあれこれ想像(曲目・ステージ構成、もしかしたらアッコさんと上原さん合作の書き下ろしの新曲があるのではなど)しながら仕事をしていましたが、想像、いや妄想はふくらむばかり。白熱必至の今夜のライブの様子を想像するだけで高揚し、心ここにあらずの状態。潔く早々に仕事をきりあげ、チケットをバッグのポケットにいれ外出の身支度をし、部屋の掃除や片付けをして時間をやり過ごしていましたが、午後5時ころには、いてもたってもいられずに、会場である昭和女子大学人見記念講堂(三軒茶屋行き)へのバスにとびのっていました。
時間をやり過ごし開場の10分ほど前に講堂に到着し(空にはきれいな満月。そしてもうすでに、かなりの人数のお客さんが開場を待っていました)、予定時間に講堂内に入場。家を出る前は「いますぐにでも会場に行きたい!」という強い衝動にかられていたのですが、こうしていざロビーに立ち、さきほど入場の際に受け取ったフライヤー(チラシ)の衝撃的な報告を目の当たりにし、この夢のようなライブの特派員レポートのことを考えると、あきらかに当惑気味である自分に気づき思わず失笑。。。このGet Togetherの白黒のフライヤーにはこう記されていたました。----決定!発表します!「矢野顕子x上原ひろみ 今年は二人でさとがえるツアー~Get Togeher~。本日レコーディングされたアルバムを11月にリリース。そのアルバムを携えて、ふたりのツアーが実現します!」と----。
今夜のこのライブに限らず、今後のお二人の共演を心のどこかでひそかに期待し、いずれその機会はあるだろうと(日本に笑顔を届けたいというお二人のご厚意から、さる4月に急遽実現した、BlueNoteでの上原さんのライブ、そしてCottonClubでのアッコさんのライブに二夜連続で行ったので)なんとなく感じるものはあったのですが、このthe gatheringのライブ情報で12月に山梨県で弾き語りコンサートがあることは知っていましたが、まさか今夜演奏(レコーディング)される楽曲をひっさげ、しかも今年の「さとがえるツアー」でそれをライブツアーとして実現されるとはまったく想像しておらず、驚きもありましたが、お二人の決断力と行動力の早さに深く感心し、その熱い想いに心を打たれたました。
嬉しさと驚きでやや頭の中が混乱し、今夜はほんとにあぶないかも(レポートの心配)と感じたので、トイレに向かい洗面所で顔を洗い、ゆっくりと深呼吸をしながら「ダイジョウブ、ダイジョウブ」と自分を叱咤激励。そしてロビーに戻ると目の前には列が。なんだろうと思い係員さんにたずねると、特典DVD付CDの先行予約をしているらしく「おそらく今夜の会場だけでの特典だと思います」となんとも微妙な返答。もうわりと長い列ができていたので、よく理解もできないまま、とりあえず予約したほうがよいだろうと思い、私も列に並びひとまず初回版の先行予約を完了。自分の座席に向かい席に腰をおろし、ステージを眺めました。目の前のステージ上に寄り添うように並ぶ2台の光輝くグランドピアノがはやる気持ちを落ち着かせてくれるような気がします。
このまま開演まで座席でリラックスしよう思っていたのですが、携帯に着信があったので席をはなれ再びロビーへ向かうと、もう先ほどの様子とはうって変わって、老若男女を問わず、幅広い年齢層のほんとうにたくさんのお客さんが特典DVD付CDの予約のために長い列をつくっていて、過去にもジャズフェスへの参加や、お互いの楽曲への参加などで、何度か共演を重ねたお二人が今夜開催するこのレコーディングライブは、アッコさんのファンだけでなく、上原さんのファン、また多くの音楽ファンの方々が待ちこがれていたコンサートなんだと痛感。そして先ほど読んだカラーのフライヤーに記されていたお二人の想いが詰まった言葉が心をよぎりました。
「深い信頼と尊敬で結ばれたふたりの音楽家が、満を持して、ふたりだけでフルアルバムを製作する。そして、それはお客様の熱気も音楽の力に変わる、ライブという場こそが最もふさわしい、という結論に達した。」
ほんとに今夜のライブに来られて良かったと思いながら、席に戻り開演を待っていると、場内の照明がおちアナウンスが流れ始めました。ここでもまたサプライズが。後半のアッコさんのMCで明かされたのですが、なんとこのアナウンスが本人たちの声によるアナウンスだったのです。自分たちの声ならお客さんもしっかりと注意事項のアナウンスに耳を傾けてくれるだろうという趣旨から、今夜のライブのために特別にアッコさんと上原さんが、実際に録音して作られたそうです。レコーディングライブなので、特に音に関する注意が多く、携帯やアラ-ム時計、ポケベル(もう使ってる人はいないだろうけどと、アッコさん談)など音のでるものは切るようにとのたってのお願い。どうしても出てしまうもの(音)は我慢してくださいとも(笑)。またお子さんもムズムズしてそうなら、申し訳ないですが、先一でお願いしますと、このライブにかける強い意気込みが伝わってきました。アナウンスの最後はお二人が声をそろえ「それではお席についてしばらくお待ちください」となんとも可愛い合唱のよう。それから待つこと数分。ステージに照明がともり、左手から上原さん、そしてアッコさんが登場。会場にはおおきな拍手が鳴り響きます。お二人が共にお辞儀をして、それぞれのピアノ(今夜の相棒)のもとに向かいました。上原さんは黒の丈長のブラウス?に黒のスパッツに水玉のスニーカー、アッコさんは白い丈長のシャツに、やはり黒のスパッツに、黒っぽいローヒール姿。二人で白と黒でコーディネート。とてもお似合いのカップルで、まばゆい朝日のようにキラキラ輝いてました!
二人はゆっくりと椅子にすわり、どちらとからともなくアイコンタクトをかわし、アッコさんのピアノから演奏が始まりました。注目の1曲目は「CHILDREN IN THE SUMMER」でした。何度も聴いている曲ですが、席が右側でしかもかなり前のほうで、しっかりと上原さんの手元まで見える位置ということもあり、上原さんの軽やかで、力強い指使いから次々と繰り出されるフレーズ、くわえてアッコさんの上原さんの演奏の特徴を引き立たせるような絶妙なタッチと、このドゥオの音全体を支えるようなピアノ演奏、そして力強くて繊細なアッコさんならではの歌声がとても感動的でお二人の世界にグっと引き込まれました。その流れのまま2曲目に突入。「あんたがたアフロ」。この曲では上原さんは時々立ち上がり、まるで指が鍵盤の上を泳いでいるかのように自由奔放に弾いたかと思えば、ときには鍵盤をたたき、アッコさんと時々目をあわせながらニコニコと楽しそうに演奏していました。またアッコさんの歌声は時にまるで、楽器のようなリズミカルな音を奏でて、ピアノとともに上原さんとの絶妙な掛け合いを繰り広げられました。ブルーの照明がとても幻想的な雰囲気を醸し出し、お二人の演奏をより魅力的にしていました。
2曲終えたところで、アッコさんのMCが始まりました。しかしこの時すでに、わたしはかなり飽和状態。やはり上原さんの演奏、ノッてくると立ち上がり、時にピアノを打楽器のように操るパフォーマンスについ見入ってしまい、記憶する能力を失ってしまいそうです(爆)。アッコさんの話はもちろん聞こえているのですが、いつもと違い右から左に抜けている感じです。アッコさんがたった今演奏した1曲目、2曲目の楽曲の説明や、今夜はYAMAHAの最高機種のピアノ(2000万円らしいです)を好き勝手に、自由にできるから嬉しいというその声は、ほんとにウキウキしていてとても嬉しそうでした。レコーディングライブなので、いつものような楽しいアッコさんのMCは少ないのかなと思いきや、このMC後の演奏後にも矢野節は炸裂しました。
このMCを終えた後、怒涛の演奏が私たちを襲ってきました。上原さんの楽曲「Capecod Chips/ケープコッド・チップス」、ビル・ウィザースの「Lean On Me」のカヴァー、アッコさんの楽曲「学べよ」(わたしはたぶん初めて聞いたと思います)。「Capecod Chips」はアッコさんがこの曲のために歌詞を書き上げたということでした。また上原さんが、演奏中に小刻みに右足でリズムをとっているのが、とても印象的でした。「Lean On Me」はたまたま知っている曲だったので、演奏を楽しみながら、アッコさんの透明感のある歌声にあわせて口ずさんでいました。「学べよ」では赤い照明に照らされながら、重厚感のあるリズムを奏でて熱唱されていたアッコさん。上原さんは相変わらずちょくちょく立ち上がり、時に手拍子もいれ、左手でリズムをキープしながら右手で弦を弾く得意技を繰り出し、ノリノリで演奏されていました。この曲でのお二人の掛け合いもとても迫力があり圧倒されました。
MCで上原さんの楽曲「Capecod Chips」について、アッコさんがご自身で歌詞を書いたこと、歌詞づくりは大変だったけど、歌に関しては上原先生がよい指導をしてくれたから助かったなどと、われわれの笑いを誘っていましたが、上原さんはずっとピアノの前に立ちながら額の汗をタオルでぬぐい、普段あまり手にしないであろうマイクを手に取り、矢野トークに一生懸命に答えようとしている姿がとても可愛らしくて、印象的でした。そしてその後、ステージに譜面台とマイクがセットされ、世界初公開となる、このライブ(アルバム)のために上原さんが作詞・作曲し、アッコさんが歌う「月と太陽」が披露されました。ピアノを離れステージ中央で歌われたアッコさん。上原さんの叙情的な演奏で歌われたこの曲は、歌詞がとても素敵でした。また青い照明に照らされたアッコさんの姿が、後ろのピアノに反射して写りこんでいて、それも印象に残りました。なおアッコさん談によれば、この曲自体は上原さんが以前にブルーノートで演奏されたらしく、その場にいあわせたアッコさんは、お客さんが「この曲なに?CD持ってないよ」と言うのを聞き、「これは新曲だよ」とつぶやいていたらしいです(笑)。けれども歌詞とともに披露されるのは、今夜が世界初だったようです。メロディーもとても美しく、上原さんの演奏も秀逸、アッコさんの華麗な歌声もあいまって、思わず聞き入ってしまいました。この曲は素晴らしい名曲だと思いました。
このあと「リンゴ祭り」という曲が演奏されました。この曲は「リンゴの唄」のジャズバージョンのようなアップテンポな曲で(たぶんジャズのスタンダードなナンバーと混ぜ合わせて作られた曲だと思いますが、曲名はわかりませんでした)。楽曲はアッコさんの持つヴォーカルの魅力を見事に引き出した曲となっていて、ふなまち歌を彷彿とさせるような見事な歌唱と、お二人の息の合った演奏がわれわれを魅了しました。ちなみにこの曲もまたいわくつきで、上原さんが編曲をされ、ヨーロッパからアッコさん宅にFAXを送ったようなのですが、紙切れで(最終的にはファイルで送られたようです)、矢野邸のFAXはカッター機能がなく、延々とロール紙が床に渦巻いていたとか。しかも最終的な枚数は10枚だったらしいのですが、アッコさんは上原さんに「わたしはどの部分を演奏するの」と尋ね「全部です」とあっさりといわれ、焦ったとか(笑)。この曲はとても長い曲のようで、今夜はショートバージョンということでアッコさんが4枚分を演奏されましたが、それでもかなり長く、充分に聞き応えがありました。
この曲を終え、椅子から立ち上がり、お二人は舞台中央へ。会場にはアンコールの拍手と喝采が沸き起こっています。おそらくご自身でもいい演奏ができたと感じたのか、すこしクネクネしていたアッコさん(笑)。終演かとおもいきや、観客の声援に応えるよう、お二人はまたピアノに向かい、ファンの方にはおなじみのマイルス・デイビスの「So What」フェイントからの「ラーメンたべたい」を演奏。この曲を聴くと、原曲の「ラーメンたべたい」からイメージするのとは違うラーメンがいろいろと頭に浮かんできます。体も揺り動かしながら、躍動的に鍵盤の上を動いている両手が一瞬鍵盤を離れ宙に飛び、お二人のもつ独特の個性が激しく、そして見事に調和した楽しい掛け合いが続き、ここだというタイミングでぴったりと演奏は終わりました。今日の演奏はどの楽曲も二人の息がぴったりと合い、決めるべきポイントもすべて完璧に合っていたと思います。
客席からは、先ほど以上の大きな拍手、声援、喝采が飛びます。わたしもその素晴らしい演奏に魅せられ、思わず大声を張り上げていました。完璧な演奏だったと思います。がここで、アッコさんの口から思いもよらぬ言葉が。「自分的に納得がいかないから、もうすこし付き合ってくださるかしら」「それに初めて聞く方もいらっしゃるかもしれないでしょう?」(笑)。これには観客も大喜び。そして、ダブルアンコールともいえる演奏がまた始まりました。最初の曲は今夜1曲目に演奏された「CHILDREN IN THE SUMMER」。しかし、もうわたしにはどこが、どう変わっているのかが、ほとんどわからず、時々「あっ、このアドリブは最初と違うな」と気づく程度で、せっかくよりよいものを作ろうとしているアッコさんと上原さんになんだか申し訳ない気持ちでした。けれど演奏そのものはとても素晴らしくて心から楽しめました。
「CHILDREN IN THE SUMMER」が終わると、またまた盛大な拍手と喝采がおき、喋りなれた?!上原さんが、「1曲目とは思えないノリ!」と言葉を発し、アッコさんが「では、さらに」と返答。ここで、アッコさん腕のストレッチ。上原さんもアッコさんになにやらアドヴァイス。続いて2曲目は「Capercod Chips」。(このあたりは記憶があいまいで、曲名が違うかも知れません。間違っていたらスミマセン)。2曲目(実際には10曲目)の白熱した演奏を終えると、上原さんが椅子を立ちアッコさんのところに歩み寄り、なにやらひそひそと話し合い。上原さんがピアノに戻り、ここでお二人は水分補給。それから、ついに3曲目(11曲目)に突入。もうゆうに2時間弱は経っていますが、お二人ともますます演奏にエネルギーがみなぎっています。見ているわたしも、2人のアーティストが完璧を求めるその姿勢に感動をおぼえました。11曲目を演奏し終え、お二人は会話もどんどん弾みだしました。まるで少女のように「公開レコーディング楽しいです!」とはしゃぐ上原さん。アッコさんも「スティーブ・ジョブス」と答え「楽しいな~」と会話が続きます。アッコさんが「上原さんは疲れないの?」と質問すると「火事場みたいなと」答える上原さん。「じゃあ、どうしたら力わく?何食べてる?」とすかさずアッコさんが問います。「炭水化物です」と上原さん。そして「いつも夜中の1時くらいまでやるんですが、今夜やったら怒られますよね?」と大胆で笑える発言。観客もお二人自身も大笑い。この会話は、じゃあもう1曲ということに落ち着きました。次の曲は12曲目。アッコさん、「さっきは味噌味だったけど、今度はトンコツよ」。「ラーメンたべたい」です!演奏が始まったのですが、アッコさんが途中で立ち上がり、一時中断。「整理できないから、わからなくなるのよ」と譜面をめくりながらぼそりと一言。すかさず上原さんが、「わたしも今トンコツのことで頭がいっぱいです。しかも今日のために1週間食べてないんです」と告白。これにはまたもや、おおきな笑いと声援が起きます。仕切り直して、再度、トンコツ味の「ラーメンたべたい」。このトンコツ味は、やはり味噌よりも重厚感というか、重みがあってとてもおいしくて、演奏も素晴らしかったです。上原さん、今夜はついにラーメン食べられますね!よかった、よかった。。。
さてここで、再び譜面台とマイクがステージ中央にセットされました。わたしは固唾をのみました。会場も一瞬静かになったような気がします。やはり皆、あの曲を期待しているはずです。
「Green Tea Farm」。
アッコさんが椅子から立ちあがりステージ中央に向かいます。「これが、アンコールです」と一言。
会場はすこし緊張感がありつつも穏やかな空気に包まれ、みながアッコさんと上原さんを見つめています。上原さんが、とても丁寧にピアノを弾き始めました。今夜一番しなやかで、しとやかなピアノの演奏。この曲は上原さんのインストゥルメンタルの原曲もCDで聞いていますが、上原さんにとってこの曲は、初めて歌詞が一緒に浮かんで作られた曲で、日本を離れてアメリカで暮らしはじめ、離れて初めて気づいたご両親、ご家族の愛情を思い書かれた楽曲と、ご自身のCDのライナーノーツで語られています。何で読んだのかは忘れてしまいましたが、歌声は初めから矢野顕子さんをイメージして作られたようです。お二人の楽曲でなによりも大好きな「Green Tea Farm」。この曲から言葉をお借りしてこのレポートを終えたいと思います
。
今夜この素敵な時間を共有できて、とても幸せでした。新曲もたくさんあり楽しかったです。12月の「さとがえるツアー」で、またお会いできることを楽しみにしています。
矢野顕子さん、上原ひろみさん、とても楽しくて素晴らしいライブを「本当にありがとう」。』
ペンネーム:zennman様より


1.CHILDREN IN SUMMER
2.あんたがたアフロ(あんたがたどこさ~アフロ・ブルー)
3.Capercod Chips
4.Lean On Me
5.学べよ
6.月と太陽
7.りんご祭り(Don't Sit Under the Apple Tree~リンゴの唄)
EC1.ラーメンたべたい
EC2.CHILDREN IN SUMMER(テイク2)
EC3.Capercod Chips(テイク2)
EC4.学べよ(テイク2)
EC5.ラーメンたべたい(テイク2)
EC.Green Tea Farm
今夜のこのライブに限らず、今後のお二人の共演を心のどこかでひそかに期待し、いずれその機会はあるだろうと(日本に笑顔を届けたいというお二人のご厚意から、さる4月に急遽実現した、BlueNoteでの上原さんのライブ、そしてCottonClubでのアッコさんのライブに二夜連続で行ったので)なんとなく感じるものはあったのですが、このthe gatheringのライブ情報で12月に山梨県で弾き語りコンサートがあることは知っていましたが、まさか今夜演奏(レコーディング)される楽曲をひっさげ、しかも今年の「さとがえるツアー」でそれをライブツアーとして実現されるとはまったく想像しておらず、驚きもありましたが、お二人の決断力と行動力の早さに深く感心し、その熱い想いに心を打たれたました。
嬉しさと驚きでやや頭の中が混乱し、今夜はほんとにあぶないかも(レポートの心配)と感じたので、トイレに向かい洗面所で顔を洗い、ゆっくりと深呼吸をしながら「ダイジョウブ、ダイジョウブ」と自分を叱咤激励。そしてロビーに戻ると目の前には列が。なんだろうと思い係員さんにたずねると、特典DVD付CDの先行予約をしているらしく「おそらく今夜の会場だけでの特典だと思います」となんとも微妙な返答。もうわりと長い列ができていたので、よく理解もできないまま、とりあえず予約したほうがよいだろうと思い、私も列に並びひとまず初回版の先行予約を完了。自分の座席に向かい席に腰をおろし、ステージを眺めました。目の前のステージ上に寄り添うように並ぶ2台の光輝くグランドピアノがはやる気持ちを落ち着かせてくれるような気がします。
このまま開演まで座席でリラックスしよう思っていたのですが、携帯に着信があったので席をはなれ再びロビーへ向かうと、もう先ほどの様子とはうって変わって、老若男女を問わず、幅広い年齢層のほんとうにたくさんのお客さんが特典DVD付CDの予約のために長い列をつくっていて、過去にもジャズフェスへの参加や、お互いの楽曲への参加などで、何度か共演を重ねたお二人が今夜開催するこのレコーディングライブは、アッコさんのファンだけでなく、上原さんのファン、また多くの音楽ファンの方々が待ちこがれていたコンサートなんだと痛感。そして先ほど読んだカラーのフライヤーに記されていたお二人の想いが詰まった言葉が心をよぎりました。
「深い信頼と尊敬で結ばれたふたりの音楽家が、満を持して、ふたりだけでフルアルバムを製作する。そして、それはお客様の熱気も音楽の力に変わる、ライブという場こそが最もふさわしい、という結論に達した。」
ほんとに今夜のライブに来られて良かったと思いながら、席に戻り開演を待っていると、場内の照明がおちアナウンスが流れ始めました。ここでもまたサプライズが。後半のアッコさんのMCで明かされたのですが、なんとこのアナウンスが本人たちの声によるアナウンスだったのです。自分たちの声ならお客さんもしっかりと注意事項のアナウンスに耳を傾けてくれるだろうという趣旨から、今夜のライブのために特別にアッコさんと上原さんが、実際に録音して作られたそうです。レコーディングライブなので、特に音に関する注意が多く、携帯やアラ-ム時計、ポケベル(もう使ってる人はいないだろうけどと、アッコさん談)など音のでるものは切るようにとのたってのお願い。どうしても出てしまうもの(音)は我慢してくださいとも(笑)。またお子さんもムズムズしてそうなら、申し訳ないですが、先一でお願いしますと、このライブにかける強い意気込みが伝わってきました。アナウンスの最後はお二人が声をそろえ「それではお席についてしばらくお待ちください」となんとも可愛い合唱のよう。それから待つこと数分。ステージに照明がともり、左手から上原さん、そしてアッコさんが登場。会場にはおおきな拍手が鳴り響きます。お二人が共にお辞儀をして、それぞれのピアノ(今夜の相棒)のもとに向かいました。上原さんは黒の丈長のブラウス?に黒のスパッツに水玉のスニーカー、アッコさんは白い丈長のシャツに、やはり黒のスパッツに、黒っぽいローヒール姿。二人で白と黒でコーディネート。とてもお似合いのカップルで、まばゆい朝日のようにキラキラ輝いてました!
二人はゆっくりと椅子にすわり、どちらとからともなくアイコンタクトをかわし、アッコさんのピアノから演奏が始まりました。注目の1曲目は「CHILDREN IN THE SUMMER」でした。何度も聴いている曲ですが、席が右側でしかもかなり前のほうで、しっかりと上原さんの手元まで見える位置ということもあり、上原さんの軽やかで、力強い指使いから次々と繰り出されるフレーズ、くわえてアッコさんの上原さんの演奏の特徴を引き立たせるような絶妙なタッチと、このドゥオの音全体を支えるようなピアノ演奏、そして力強くて繊細なアッコさんならではの歌声がとても感動的でお二人の世界にグっと引き込まれました。その流れのまま2曲目に突入。「あんたがたアフロ」。この曲では上原さんは時々立ち上がり、まるで指が鍵盤の上を泳いでいるかのように自由奔放に弾いたかと思えば、ときには鍵盤をたたき、アッコさんと時々目をあわせながらニコニコと楽しそうに演奏していました。またアッコさんの歌声は時にまるで、楽器のようなリズミカルな音を奏でて、ピアノとともに上原さんとの絶妙な掛け合いを繰り広げられました。ブルーの照明がとても幻想的な雰囲気を醸し出し、お二人の演奏をより魅力的にしていました。
2曲終えたところで、アッコさんのMCが始まりました。しかしこの時すでに、わたしはかなり飽和状態。やはり上原さんの演奏、ノッてくると立ち上がり、時にピアノを打楽器のように操るパフォーマンスについ見入ってしまい、記憶する能力を失ってしまいそうです(爆)。アッコさんの話はもちろん聞こえているのですが、いつもと違い右から左に抜けている感じです。アッコさんがたった今演奏した1曲目、2曲目の楽曲の説明や、今夜はYAMAHAの最高機種のピアノ(2000万円らしいです)を好き勝手に、自由にできるから嬉しいというその声は、ほんとにウキウキしていてとても嬉しそうでした。レコーディングライブなので、いつものような楽しいアッコさんのMCは少ないのかなと思いきや、このMC後の演奏後にも矢野節は炸裂しました。
このMCを終えた後、怒涛の演奏が私たちを襲ってきました。上原さんの楽曲「Capecod Chips/ケープコッド・チップス」、ビル・ウィザースの「Lean On Me」のカヴァー、アッコさんの楽曲「学べよ」(わたしはたぶん初めて聞いたと思います)。「Capecod Chips」はアッコさんがこの曲のために歌詞を書き上げたということでした。また上原さんが、演奏中に小刻みに右足でリズムをとっているのが、とても印象的でした。「Lean On Me」はたまたま知っている曲だったので、演奏を楽しみながら、アッコさんの透明感のある歌声にあわせて口ずさんでいました。「学べよ」では赤い照明に照らされながら、重厚感のあるリズムを奏でて熱唱されていたアッコさん。上原さんは相変わらずちょくちょく立ち上がり、時に手拍子もいれ、左手でリズムをキープしながら右手で弦を弾く得意技を繰り出し、ノリノリで演奏されていました。この曲でのお二人の掛け合いもとても迫力があり圧倒されました。
MCで上原さんの楽曲「Capecod Chips」について、アッコさんがご自身で歌詞を書いたこと、歌詞づくりは大変だったけど、歌に関しては上原先生がよい指導をしてくれたから助かったなどと、われわれの笑いを誘っていましたが、上原さんはずっとピアノの前に立ちながら額の汗をタオルでぬぐい、普段あまり手にしないであろうマイクを手に取り、矢野トークに一生懸命に答えようとしている姿がとても可愛らしくて、印象的でした。そしてその後、ステージに譜面台とマイクがセットされ、世界初公開となる、このライブ(アルバム)のために上原さんが作詞・作曲し、アッコさんが歌う「月と太陽」が披露されました。ピアノを離れステージ中央で歌われたアッコさん。上原さんの叙情的な演奏で歌われたこの曲は、歌詞がとても素敵でした。また青い照明に照らされたアッコさんの姿が、後ろのピアノに反射して写りこんでいて、それも印象に残りました。なおアッコさん談によれば、この曲自体は上原さんが以前にブルーノートで演奏されたらしく、その場にいあわせたアッコさんは、お客さんが「この曲なに?CD持ってないよ」と言うのを聞き、「これは新曲だよ」とつぶやいていたらしいです(笑)。けれども歌詞とともに披露されるのは、今夜が世界初だったようです。メロディーもとても美しく、上原さんの演奏も秀逸、アッコさんの華麗な歌声もあいまって、思わず聞き入ってしまいました。この曲は素晴らしい名曲だと思いました。
このあと「リンゴ祭り」という曲が演奏されました。この曲は「リンゴの唄」のジャズバージョンのようなアップテンポな曲で(たぶんジャズのスタンダードなナンバーと混ぜ合わせて作られた曲だと思いますが、曲名はわかりませんでした)。楽曲はアッコさんの持つヴォーカルの魅力を見事に引き出した曲となっていて、ふなまち歌を彷彿とさせるような見事な歌唱と、お二人の息の合った演奏がわれわれを魅了しました。ちなみにこの曲もまたいわくつきで、上原さんが編曲をされ、ヨーロッパからアッコさん宅にFAXを送ったようなのですが、紙切れで(最終的にはファイルで送られたようです)、矢野邸のFAXはカッター機能がなく、延々とロール紙が床に渦巻いていたとか。しかも最終的な枚数は10枚だったらしいのですが、アッコさんは上原さんに「わたしはどの部分を演奏するの」と尋ね「全部です」とあっさりといわれ、焦ったとか(笑)。この曲はとても長い曲のようで、今夜はショートバージョンということでアッコさんが4枚分を演奏されましたが、それでもかなり長く、充分に聞き応えがありました。
この曲を終え、椅子から立ち上がり、お二人は舞台中央へ。会場にはアンコールの拍手と喝采が沸き起こっています。おそらくご自身でもいい演奏ができたと感じたのか、すこしクネクネしていたアッコさん(笑)。終演かとおもいきや、観客の声援に応えるよう、お二人はまたピアノに向かい、ファンの方にはおなじみのマイルス・デイビスの「So What」フェイントからの「ラーメンたべたい」を演奏。この曲を聴くと、原曲の「ラーメンたべたい」からイメージするのとは違うラーメンがいろいろと頭に浮かんできます。体も揺り動かしながら、躍動的に鍵盤の上を動いている両手が一瞬鍵盤を離れ宙に飛び、お二人のもつ独特の個性が激しく、そして見事に調和した楽しい掛け合いが続き、ここだというタイミングでぴったりと演奏は終わりました。今日の演奏はどの楽曲も二人の息がぴったりと合い、決めるべきポイントもすべて完璧に合っていたと思います。
客席からは、先ほど以上の大きな拍手、声援、喝采が飛びます。わたしもその素晴らしい演奏に魅せられ、思わず大声を張り上げていました。完璧な演奏だったと思います。がここで、アッコさんの口から思いもよらぬ言葉が。「自分的に納得がいかないから、もうすこし付き合ってくださるかしら」「それに初めて聞く方もいらっしゃるかもしれないでしょう?」(笑)。これには観客も大喜び。そして、ダブルアンコールともいえる演奏がまた始まりました。最初の曲は今夜1曲目に演奏された「CHILDREN IN THE SUMMER」。しかし、もうわたしにはどこが、どう変わっているのかが、ほとんどわからず、時々「あっ、このアドリブは最初と違うな」と気づく程度で、せっかくよりよいものを作ろうとしているアッコさんと上原さんになんだか申し訳ない気持ちでした。けれど演奏そのものはとても素晴らしくて心から楽しめました。
「CHILDREN IN THE SUMMER」が終わると、またまた盛大な拍手と喝采がおき、喋りなれた?!上原さんが、「1曲目とは思えないノリ!」と言葉を発し、アッコさんが「では、さらに」と返答。ここで、アッコさん腕のストレッチ。上原さんもアッコさんになにやらアドヴァイス。続いて2曲目は「Capercod Chips」。(このあたりは記憶があいまいで、曲名が違うかも知れません。間違っていたらスミマセン)。2曲目(実際には10曲目)の白熱した演奏を終えると、上原さんが椅子を立ちアッコさんのところに歩み寄り、なにやらひそひそと話し合い。上原さんがピアノに戻り、ここでお二人は水分補給。それから、ついに3曲目(11曲目)に突入。もうゆうに2時間弱は経っていますが、お二人ともますます演奏にエネルギーがみなぎっています。見ているわたしも、2人のアーティストが完璧を求めるその姿勢に感動をおぼえました。11曲目を演奏し終え、お二人は会話もどんどん弾みだしました。まるで少女のように「公開レコーディング楽しいです!」とはしゃぐ上原さん。アッコさんも「スティーブ・ジョブス」と答え「楽しいな~」と会話が続きます。アッコさんが「上原さんは疲れないの?」と質問すると「火事場みたいなと」答える上原さん。「じゃあ、どうしたら力わく?何食べてる?」とすかさずアッコさんが問います。「炭水化物です」と上原さん。そして「いつも夜中の1時くらいまでやるんですが、今夜やったら怒られますよね?」と大胆で笑える発言。観客もお二人自身も大笑い。この会話は、じゃあもう1曲ということに落ち着きました。次の曲は12曲目。アッコさん、「さっきは味噌味だったけど、今度はトンコツよ」。「ラーメンたべたい」です!演奏が始まったのですが、アッコさんが途中で立ち上がり、一時中断。「整理できないから、わからなくなるのよ」と譜面をめくりながらぼそりと一言。すかさず上原さんが、「わたしも今トンコツのことで頭がいっぱいです。しかも今日のために1週間食べてないんです」と告白。これにはまたもや、おおきな笑いと声援が起きます。仕切り直して、再度、トンコツ味の「ラーメンたべたい」。このトンコツ味は、やはり味噌よりも重厚感というか、重みがあってとてもおいしくて、演奏も素晴らしかったです。上原さん、今夜はついにラーメン食べられますね!よかった、よかった。。。
さてここで、再び譜面台とマイクがステージ中央にセットされました。わたしは固唾をのみました。会場も一瞬静かになったような気がします。やはり皆、あの曲を期待しているはずです。
「Green Tea Farm」。
アッコさんが椅子から立ちあがりステージ中央に向かいます。「これが、アンコールです」と一言。
会場はすこし緊張感がありつつも穏やかな空気に包まれ、みながアッコさんと上原さんを見つめています。上原さんが、とても丁寧にピアノを弾き始めました。今夜一番しなやかで、しとやかなピアノの演奏。この曲は上原さんのインストゥルメンタルの原曲もCDで聞いていますが、上原さんにとってこの曲は、初めて歌詞が一緒に浮かんで作られた曲で、日本を離れてアメリカで暮らしはじめ、離れて初めて気づいたご両親、ご家族の愛情を思い書かれた楽曲と、ご自身のCDのライナーノーツで語られています。何で読んだのかは忘れてしまいましたが、歌声は初めから矢野顕子さんをイメージして作られたようです。お二人の楽曲でなによりも大好きな「Green Tea Farm」。この曲から言葉をお借りしてこのレポートを終えたいと思います
。
今夜この素敵な時間を共有できて、とても幸せでした。新曲もたくさんあり楽しかったです。12月の「さとがえるツアー」で、またお会いできることを楽しみにしています。
矢野顕子さん、上原ひろみさん、とても楽しくて素晴らしいライブを「本当にありがとう」。』
ペンネーム:zennman様より


1.CHILDREN IN SUMMER
2.あんたがたアフロ(あんたがたどこさ~アフロ・ブルー)
3.Capercod Chips
4.Lean On Me
5.学べよ
6.月と太陽
7.りんご祭り(Don't Sit Under the Apple Tree~リンゴの唄)
EC1.ラーメンたべたい
EC2.CHILDREN IN SUMMER(テイク2)
EC3.Capercod Chips(テイク2)
EC4.学べよ(テイク2)
EC5.ラーメンたべたい(テイク2)
EC.Green Tea Farm






