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ニューヨーク
動物医療の最前線
アッコちゃんが真面目にレポートしてきました!

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日本でもアメリカでも、人々が医療に寄せる関心って絶大です。残念だけど私だって病気にかかる時があるし、みんなの大切な人が怪我をするかもしれません。そんな時、私たちが抱く「へっぽこよりは優秀で、怖いよりは優しい先生に診てもらいたい」って気持ち。「これってきっと動物たちだって一緒なんじゃないかなぁ」と編集長は考えます。
ここ数年、矢野家の猫たちを診てくれているDr.Saneは、編集長が絶大の信頼を寄せるグリニッチヴィレッジの獣医さん。開業して数年ですが、初診は二週間待ちが当たり前ってほどの盛況ぶり。


「月刊アッコちゃんでこの方をぜひ紹介したいの」という編集長の強い希望でかなったのが今回の対談でございます。二ューヨークの一角で、猫好きアッコちゃんと凄腕先生がくりひろげた熱い猫とか犬とか牛さんの世界のお話をお楽しみくださいな。




月アッコNo.8-7




対談:Dr. Tracy Sane × 矢野顕子




編集長:
「先生にはぷーちゃんを始め、うちの子たちが大変にお世話になって。その節は本当にどうも。先生のクリニックに来るようになったのは、以前こちらを運営されていた女医さんが病院を移転されてからですよね?」

月アッコNo.8-1




Dr. Sane
「えぇそうなりますね。彼女が数年前にこのクリニックを売りに出したのを知って、ビジネスをそのまま買い取りクリニックを引き継ぐことにしたんです。私自身は獣医を20年近くやっていますが、もともとグリニッチヴィレッジに馴染みが深かったことと、こんなに美しい街並みの中で自分のクリニックを開きたいという思いがあったので、ほとんど即決でした。」

編集長
「実際に働かれての印象はどうですか?」

Dr. Sane
「とっても気に入っています。とにかく、ペットを生活の中心にされた方々が多い街ですね。みなさん子供を愛するようにペットを愛していて、可能な限りのことをペットにしてあげたいという方ばかり。そんなオーナーが多く暮らす地域で獣医として働けるのは喜びです。」

編集長
「子供みたいってすごくわかるなぁ。」

Dr. Sane
「ヴィレッジにやって来るまで、ニュージャージー、ブルックリン、マサチューセッツ、それにマンハッタン内の他のエリアでも一般的な診療や動物の救援活動なんかをしてきたんですけど、ヴィレッジはペットと人間の関係という意味においても非常に特別な地域ですね。」

編集長
「そう言ってもらえると住人としては嬉しいです。ところで、先生はなぜ獣医を志されたんですか?」

Dr. Sane
「志したというか…私はテネシー州の農場で生まれ育ったもので、人生の早い時期から馬や牛といった大きな動物との関係が多くて。そこにはもちろんたくさん犬や猫もいましたけどね。それで大学へ進む頃には、気がつくと獣医という選択肢が一番妥当というか、自然に思えたというところでしょうか。」

月アッコNo.8-2




編集長
「ちなみに、ペットと家畜って獣医として求められることが大きく違いますか?」

Dr. Sane
「えぇ違いますよ。家畜相手の獣医の仕事というのは犬や猫を相手にするよりも格段に肉体を酷使します。若い頃はそういう部分に惹かれたわけですけどね。とにかく労働時間も不規則になりがちですから。今は自分が40代半ばになって、ペットの方にシフトしたのもやはり肉体的に過酷な労働は難しくなってきたってことがありました。」

編集長
「感情面での違いっていうのはどうですか?ペットと家畜を相手にした時の。」

Dr. Sane
「そうですねぇ…。馬の飼い主の方などは、あなたにとっても猫のように、強い愛情を抱いていますけど。それらと牛や豚のような食用に飼われているオーナーを比べることはフェアじゃありませんよね。そこにはもっと経済的な決定が大きく関係してきますから。おのずと獣医としての私に求められる仕事も異なります。それはつまり、感情的な意味においてもね。」

編集長
「なるほど。」

Dr. Sane
「少なくとも私にはそう思えました。その辺で、仕事に対する喜びを感じられなくなって、現在のようなペット中心の獣医へと転身したのかもしれません。ペンシルベニアの農場にいるかわりにヴィレッジに。」

編集長
「先生がヴィレッジに来てくれて大勢の方が喜んでいますよ。」

Dr.Sean「そう願います(笑)。」
編集長
「先生から見たヴィレッジの動物病院の特徴ってどの辺ですか?」

Dr. Sane
「結局のところ、医療というのは地理的な特徴が反映されるものだと思います。人の一日の過ごし方が地域によって異なるようにね。例えば今、待合室でまっている猫が一匹いますが。あの子の場合、朝から聴覚に変調があったわけですけど、そういった些細なことに飼い主の方が気づくということがヴィレッジのペットオーナーの特徴です。ペットの必要に対する関心は私がこれまで働いたどんな地域よりも高いわけです。それが郊外に行くと、人々の関心は子供や綺麗な裏庭や、はたまた家の装飾にうつったりします。ペットへの愛情がないわけではありませんが、もっと現実的というのでしょうか。都市部の生活では、ある種、ペットへの感情的依存が高い。そのためペットの立場もおのずと高くなりますよね。」

月アッコNo.8-6




編集長
「そうかもしれませんねぇ。子供が3人居てってなったら、猫との付き合い方も変わってしまうかも。えぇ~次の質問ですが、これまでにヴィレッジで出会った変わった患者さんは?」

Dr. Sane
「変わった患者さんですか…。時々どうしてこんなことになったんだろうってケースには出会います。先日も、ゴム製のサンダルの一部を飲み込んじゃった猫が連れてこられて。」

編集長
「サンダル?」

Dr. Sane
「えぇ。手術で摘出する羽目になりましけど。なぜあの猫がサンダルを食べたのかは不明のままです(笑)。」

編集長
「ネットで見ると先生のクリニックをお勧めする書き込みがたくさんあるんです。ご自身では、どの辺がそういう評判に繋がっていると思われますか?」

月アッコNo.8-3




Dr. Sane
「自分で答えにくい質問ですねぇ。(ちょっと照れながら)オーナーの方に言われるのは、私が動物を本当に好きなのが伝わるってことですかねぇ。この仕事は動物と繋がっていられることが大切なんです。なぜかというと、獣医としての情熱みたいなものが燃え尽きやすいのも事実だからです。我々は一日に何十件もの患者を診察し、オーナーに病状を説明しなければなりません。気がつくと、一日の仕事をこなすことでいっぱいになってしまうわけです。過酷な労働で心身共に疲れた中でモチベーションを保つのが難しくなってしまう。動物が好きで獣医になってはみたものの、毎日の仕事は病んだ動物の苦しんだ姿を診なければなりません。そうやって少しずつエネルギーが奪われていくんです。まっとううな人間なら、20匹の病んだ動物を診た後でも、精神的、肉低的に同じ状態でいられるはずがありませんから。」

編集長
「そうでしょうねぇ。」

Dr. Sane
「そういった中で、先ほどの質問に単刀直入に答えるとしたら、私が犬や猫を好きでい続けているってことがオーナーの方に伝わっているからじゃないでしょうか。私の患者さんが他の病院にペットを連れて行った際に、同じような愛情をドクターから感じられなかったという意見を聞くことがあります。」

編集長
「オーナーはやっぱり犬や猫が大好きな先生に自分のペットを診てもらいたいですもんね。」

Dr. Sane
「私が逆の立場でもそうだと思います。」

編集長
「私の場合、先生の正直さ、特に診断結果や診療方針に対して率直な考えを述べてもらえる点が信頼できる要因なんです。その際も必要以上に感情的ではないのですが、冷淡というわけでもなくて。」

月アッコNo.8-8




Dr. Sane
「そう言ってもらえて嬉しいです。誰だって、自分の子供にまったく関心のないお医者さんの所へ連れては行かないですよね。犬や猫もある意味、子供ですから。でも難しいのは、獣医として感情的にどういうバランスをとるかってことなんです。」

編集長
「最初から全身全霊を注いで全てのペットに向き合っていたら潰れちゃうし、だからといって「この辺で」っていうのも嫌だし。他人のショーを観ていても「あぁ~仕事でやってるなぁ」っていうのは伝わってくるのと同じですね。それが伝わったらまたこようとは思わないわけです。先生の、基本的に動物が好きで、でも燃え尽きないっていうバランス感覚が素晴らしいんでしょうね。それは、ぷーちゃんをここから紹介してもらった時にすごく感じましたね。あの時、診てもらった専門医の方はどちらかというと「割り切り型」だったんです。それが分かるの。あそこの病院はすごくシリアスなケースばかりですから、そういう風に振舞わないとしょうがないんでしょうけど。」

Dr. Sane
「えぇ。」

編集長
「それで、ぷーちゃんが本当に最後って時に、やっぱりこの病院で看取ってあげたいって思ったんですね。マイケルの時は機を逸してしまって、苦しい最後を迎えさせてしまったんですけど。その時もここに連れてくればよかったなぁって。」

Dr. Sane
「ありがとうございます。自分が扱ってもらいたいと思う方法で、他の人や動物とも向き合いたいと思っています。多くの医療従事者、それが人間の医者であっても獣医や歯医者でも、自分が患者の時の気持ちを忘れてしまっているってことがあるように感じます。患者さんは緊張しているのに、医者があわただしく診察するようでは、大切なことが忘れられているのかもしれませんね。」

月アッコNo.8-5




編集長
「ところで、最近の経済悪化はなにか変化をもたらしました?」

Dr. Sane
「ヴィレッジで2006年の4月から開業していますが、数ヶ月前までは一度も診療方針を説明している最中に治療費を聞かれたことがありませんでした。誰もね。今は、みなさん聞いてきます。幸いにも、それによってベストの診療を差し控えるってことはまだありませんが。」

編集長
「なるほど。最後の質問になりますが、先生は犬と猫、ずばりどっちが好きですか?」

Dr. Sane
「うーん今日一番難しい質問ですね(笑)。リラックスしたい時は猫、なにかをしたいって時は犬と一緒にいたいですかね。」

編集長
「ありがとうございました。」

月アッコNo.8-4


おまけ


対談でも出てきましたペットたちと「癌」の問題。最近の調査によると、米国に暮らす2歳以下と8歳以上の犬たちの死因でもっとも多いのは「癌」だそうです。このような現状を受けて、ここニューヨーク市では数年前に、動物の癌治療と研究の専門病院、New York City Veterinary Specialists and Cancer Treatment Centerがオープンしました。
同病院グループの共同創始者のニール・シャウ博士にも動物医学が直面する課題へ取り組む現状について少しだけうかがってみました。





こちらでは癌患者への緊急医療をおこなっていると聞きましたが。
ニール・シャウ博士
「コストや人材面などで癌医療の緊急治療態勢を常時設けるのは容易ではありません。ですが、癌治療の現場の多くでは、病気発見から最善の処置までにかかった時間によって、術後の生存率などが大きく変ってきます。この問題を解決するには、志の高いスタッフと最先端の治療器具や施設の完備などといったインフラ面の充実がどうしても求められます。必要な治療を、最短の待ち時間で施すために、独自の運営システムを用いるのもそのためです。」

実際にどのような治療が行われているのでしょうか?

ニール・シャウ博士
「いわゆる外科的処置では、全米でも最高水準の治療を行える自信があります。また、内科治療、緊急看護スタッフに加え、腫瘍学や皮膚科学の専門家、また放射線治療のスペシャリストなどが一つのチームとなって連携した治療を行います。放射線治療に関しては、ペットの世界ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、我々の治療レベルは人間の癌患者さんが受ける治療となんら遜色のないレベルにまで達しています。
また我々の病院には、ICU、デジタルレントゲン設備、MRI、CTスキャン検査設備などがあります。理解していただきたいのは、最高水準の設備がなければ癌治療を行えないということではありません。ただ、これらのインフラ設備のお陰で救えるペットが確実に増えるという事実です」

最後に、癌治療の専門家としてペットオーナーの方にメッセージがありますか?

ニール・シャウ博士
「癌治療で大切なのは何よりも癌腫瘍を早期発見することです。そのために出来ること、例えば定期的な健康診断を受けさせてみるのはどうでしょうか。癌治療の現場では、手術、キモセラピー、放射線の三段階の治療が行われます。それらはすべて、癌を取り除くことを目的に行われます。しかし、本当に大切なことは、ペットとその家族であられる皆さんのクオリティー・ライフです。もし皆さんの飼われている犬や猫が癌にかかった時は、そのことを理解し尊重してくれる獣医のもとで最善の選択をなさってください。」



編集長後記
ドクターセインが近所にいてくれるってだけで、どれほどたくさんの飼い主たちが感謝していることでしょう。実はうちのアパートの掲示板に、ある日、今度来た先生は素晴らしいから、是非見てもらいに行って!という、4階に住むゲイルのコメントが貼ってあり、それで行くようになったのです。(ここには、だれか高枝切りバサミ持ってなーい? とか、きょうはバンドが来てパーティするから12時までは音勘弁してねー、とか、今週末はakikoのコンサートです。お忘れなく! ーそれもわたしが書いたんじゃなくー なんていうのも貼られてたりします。)前に日記にも書いたけど、わたしが安楽死する時は、この人のところに行きたいです。



Tracy Sane, DVM

Greenwich Village Animal Hospital
504 Hudson Street
New York, NY 10014
(212) 691-1100
http://www.GVAH.com
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